消費しない果樹栽培

これからは消費しない果樹栽培。

いままでは家庭でビタミンCの栄養を補給するためになるべく1年中収穫できることを前提にさまざまな果樹を蒐集してきました。すぐれた品種の中にはウォシュタやオレンジなど必要もないのに欲しくなるようなものもありましたけど、そこはぐっと我慢して当初の目的である家計の補助となる果樹の生産という目的を達するのに十分な種類の苗木を得たと思っています。

ビタミンCは私たちの日常の食生活ではサプリメントなしに補えない栄養素です。スーパーマーケットの青果でビタミンCを含む食べ物といえば、柑橘類かキウイ、柿などは毎日の食卓に人数分揃えることはできない値段となっています。

いつも家族からバカだと言われている私の無い頭でちょっと考えてみると、果樹という分野は個人の消費に限りがある分野といえましょう。そこを新品種の導入で消費を積極的に刺激して農家にさらなる競争と疲弊をもたらしている禁断の果実。果たして農業の分野に大きなイノベーションは必要なのでしょうか。イノベーションとは労働力を削減して収穫量を増やす意味も含んでいるでしょう。そのイノベーションは古い農業を駆逐して地球ごと滅ぼさざるを得ない強い欲望と攻撃力を持っています。大量生産・大量消費という方向性はそうやってると人件費の高騰や資源の枯渇や高額で大きな機械のコストで営んでいるアメリカの農家ですら持続が厳しいと本人たちは言ってます。だいたい日本の民家と農地は隣り合わせですから凄い機械を使っての営農は北海道や干拓地以外では無理なのです。フランスのある地域はワインの製造を有機栽培に切り替えています。

物が欲しいという欲望は果樹栽培でも割と同じで嵌(は)まればいくらでもいいものが欲しくなります。しかしよくよく考えてみると自分の生活には「みかん」は必要でも手がかかり露地栽培ではボロボロになる「せとか」は必要ないし農薬ありの果樹は既製品を買えば済むことだからわざわざ育てる必要ありません。

私は趣味のモットーとしている「慣行栽培で農薬が絶対に必要となる果樹は自分の菜園では必要がない」ことを時々見失いつつ葛藤してきました。それがブドウと梨、リンゴと桃についてです。この四つは苗木を買った時点で欲望に負けて失敗したかな~とちょっと後悔しているも有機栽培できる方法を模索しています。これらの栽培には趣味以上の農薬が必要なので害虫や病気との格闘で休日が何日か潰れるデメリットがありました。何とか有機栽培の農薬を使って対処していますがそれも限界があります。

欲望とは悲しいもので、既に食器や食材があってもいいものが欲しいと思ってしまいます。それは精神面でも同じで既に幸せがそこにあっても、もっと楽しくなりたい、幸福を感じたい、などと似たような思考パターンで時々自分を顧みなければストレスに感じてしまうことでしょう。

そういうことで、欲深い私もついに、苗木を買い足すことはこれでおしまいにしたいと思います(といいつつ、また新しい苗が欲しくなる!)。

今は世界中が実態を伴わない仮想のバブルに隠された大きな借金を見ないことにしている危うい時代です。それがリスクとは言えないまでも果樹とバブルは直接関係ありませんが、欲望というところでは根は同じです。果樹栽培もほどほどにして必要以上に作らないようにしたいと思います。ふと思ったのですが、今の時代は環境にも人にも優しい生き方への転換点であるといえましょう。物でも人でも使い捨ての経済は永遠に持続し得ないのです。

このお正月に、私もやっと禅のよさがわかるようになりました。
果樹相手にあくせくしている時間そのものが幸せなんですね。

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